現在Wranglersで恐ろしいくらい流行っているのが…
Staph。
そうなんです。ちょっとまずいんです。
最初に感染者が出た時点でteamにwarnして、AT陣も細心の注意を払っていたんですけど、
その甲斐も虚しく、既に5人くらいが犠牲になっています。
Staph infectionについては以前に記事にしたこともあったのですが、
今読み返してみたらあってないような内容だったので、今回改めてまとめてみます。
Staph infection(スタッフ インフェクション)というのは、アメリカでは恐らく誰でも知っている、かなりcommonな言葉。初めて聞いたときは、staphの発音がstaffと全く一緒だったので、
“は、Staff infection??”と思ったのですが、
staphというのは、感染原因であるバクテリアの名前なんですね。
このバクテリアの正式名称は、
Staphylococcus。
(発音:staf-uh-low-kah-kus)
バクテリアはそのshapeから主に3つの種類に分類することができるのですが(→)、
・Cocci…round(球形)
・Bacilli…rod(棒状)
・Spirilla…spiral(螺旋状)
このStaphylococcusは、語源のギリシャ語で、
staphyle…bunch of grapes(房状の葡萄)
coccos…granule(粒子)
という意味を表すように、
(↑)葡萄の房のような、丸々と連なった形をしているので、cocciの一種です。
Staphylococcusを調べていて必ず出てくるのが、
gram-positiveという単語。
この意味が全く分からずにいたのですが、調べてみると、
Gram stainという、バクテリアの種類分けをするテストがあるらしくって、
1. Crystal violetという紫色の染料でバクテリアに色を付ける。
2. AlcoholかAcetoneでそれを洗う。
3. →色が落ちたら…Gram-negative
→色が落ちず、紫色がそのまま残れば…Gram-positive(→写真)
ということらしいです。これ以上は気力がなくて調べていないのですが、バクテリア細胞壁のchemical and physical propertiesをこれで分類することができるのだとか。
これが壁の造りが違えば、薬等によるその壁を破壊するメカニズムも変わってきて、
これを判別することが治療のプロセスの役に立つのかな、と勝手に推測しています。
まぁ、あんまりmicroな話はいいですよね。
さて。私にとってはStaphylococcusなんて言いにくいこと極まりない十分長い名前なのですが、これはある意味、苗字のようなものにすぎないんですね。
Staph一家には実に31名のもメンバーがおり、
つまり、皆異なったfirst nameを持っているんです。
例えば、例を挙げると、
Staphylococcus afermentans, Staphylococcus aureus
Staphylococcus auricularis, Staphylococcus capitis
Staphylococcus caprae, Staphylococcus epidermidis
Staphylococcus felis, Staphylococcus haemolyticus
Staphylococcus hominis, Staphylococcus intermedius....
というように、Staphの中にも山のような種類があるんです。
種類が異なれば、引き起こす症状も異なるわけですが、
(例えば、S. saprophyticusはUrinary tract infectionの原因になります)
でも、主な症状は皮膚ににきびの様なおできの様なclumpができる、というものです。
このStaph、皮膚の上にちょこんと座っているだけでは全くの無害なのですが、例えば引っ掻き傷や切り傷などでひとたび皮膚が破れると、体内に入り込んでinfectionを引き起こします。
中でも原因として最もcommonなのが、
S. aureus。
一家の中でも一番暴れん坊の末っ子、と言ったところでしょうか。
Minor localized skin infections (pimples, folliculitis, boils, impetigo, cellulitis etc)、それからabscesses等を引き起こし、時としてその部位を動かすのが痛いほど大きく深く成長することがあります。
<Treatment>
治療法としては、バクテリアなのでantibiotics(抗生物質)を使えば良いのですが、
厄介なことにバクテリアも賢く進化するもので、
Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(
MRSA)というペニシリンに耐性を持つ新しい種類のS. aureusがイギリスで1961年に発見され、そこから爆発的に世界中に広がっています。現在では、MRSAと区別して、ペニシリンで治療可能な昔からのS. aureusを
Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus(
MSSA)と呼ぶことも多いようです。MRSAに感染した場合は、Vancomycinやteicoplaninといった、より強力な抗生物質を使わなければいけなくなります。
でっかいStaph infection、恐らくAT roomで働く皆さんなら一度は見たことがあるでしょう。
PopしたStaphから、coreを引き抜いて膿を全部squeeze outして、綺麗にして、ガーゼを詰めて…。私自身が感染した経験がないのでアレですが、でっかいFootball選手が顔を真っ赤にして、時に絶叫しながらガーゼを詰める痛みに耐えている場面は、なかなか怖いものがあります。
<How to prevent>
このバクテリアは、physical contactで感染します。skin-to-skinの直接感染もあれば、
乾いた環境でもStaphはしばらく生きることができるので、
感染者が触ったものを触ってしまって二次的に感染する、といったケースもあります。
Community-associated infectionと言われることもあるように、
閉鎖的でcompactedな団体の中では一気に広まりやすいです。
例えば、寮の中、病院、あとはまさに、スポーツチーム、とか。ですかね。
今のAustin Wranglersでは、
・感染者を治療するときにはAT roomのドアを閉め、隔離して行い、
その後は必ずテーブル、椅子、全てをdisinfectする。
・どんなopen woundも、練習後には綺麗にして、antibioticsを使ってカバーする。
・練習後は、食事前に真っ先に選手にシャワーを浴びさせる。
・清掃時には、選手が触る全てのものをdisinfect。
等、色々気をつけています。もちろん、open woundを触るときはgloveを使いますし、
治療前後もしっかりwarm water + soapで手洗いします。Staphに触れたgloveや
ガーゼは、biohazardの中でもまた別の袋に入れ、二重に袋詰めにして廃棄します。
いやいやでも、これだけ気をつけてまだ広まっているんだから、
まだまだ不十分なんでしょうか。皆さんはどんな風に予防されていますか?
うちのチームの感染源は一体何なのか、本当に気になります。汚いロッカールームかな…。
選手のこれ以上の感染を食い止めることももちろんですが、
そのためには、まず自分が絶対感染しないこと、が一番です。
私たちATはどの選手も満遍なく触りますし、一番可能性としては感染しそうですからね。
本当に気をつけないとねぇ、としみじみJasonと今日話していたところです。
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おまけ。
今回ちゃんと調べるまで、Staph infectionと言えばlocalized skin infection、と勝手に思っていたのですが、実はFood poisoning(食あたり)の原因としても非常にcommonらしいのです。きちんと管理されていない食べ物の中でバクテリアが繁殖すると、
それを食べることによって食あたりになってしまう、というわけですね。
バクテリアは水分が十分にある環境で活発に繁殖しますが、タフなstaphはチーズやサラミと言った、わりかし水分の少ない食べ物でも成長できるらしいです。
調理すればバクテリアを殺すことももちろん可能なのですが、
その毒素は耐熱性があり、数分間は沸騰するほどの熱でも生きることができるそう。
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おまけのおまけ。
今日、練習前や中や後に、何人もの人(選手だけでなくコーチも含む)に聞かれたのが、
“空港に迎えに来てた人、彼氏?”
…。
迎えに来ていたのはMOMO氏なんですけど、
僕らは性別を超えて仲が良く、あちこちに出没するからか、
トレーナー仲間から日本人の友人からathletesから、色んな人に同じ質問をされます。
違います、姉弟のようなもんなんです。と説明したら、
なんだー、紹介してくれないからすねてたのに、と言われました(笑)。
まーやっぱり日本人の男女が並んでいたら、カップルに見えるんでしょうね。
それにしても、皆聞くときには“こっそり”聞いてくる、その心遣いが可愛らしくて笑えました。