There are wealthy gentlemen in England who drive four-house passenger coaches twenty or thirty miles on a daily line, in the summer, because the privilege costs them considerable money; but if they were offered wages for the service that would turn it into work then they would resign.
from "The Adventures of Tom Swayer" by Mark Twain
-------------------------------------
さーて、どうも気分が上がらないときにはスポーツが一番です。
自分の中に溜まった毒の出し方は色々あると思うけど、
私の場合はバスケか大泣きですね。でも最近泣けないんですよ。誰か泣かせてください。
そんなわけで今日はすっかり毎週恒例になったバスケ、しに行ってきました。
懲りずに2時間くらい動き回ってましたが、今日はわりかし調子が良くて、単純な私は結構気分が良くなりました(笑)。Physicalに疲れるとだるさもまた気持ち良いですよね。
--------------------------------------
さて、一昨日ちょこっと名前だけ話に出した
Overjustification Effectのお話です。
言葉の意味はoverjustification=過度な正当化、根拠付け、なんですが、
要はどういう説かというと、“ヒトは好きなものに対して過剰な報酬を与えられるとそれが好きでなくなってしまう”ということなんです。
ヒトが何かしらの行動を起こすときに、その引き金となるものがあります。
それらは、
Intrinsic motivationと
Extrinsic motivationのどちらかに分類されます。
Intrinsic motivation…“好きだから”“楽しいから”やる、という自分の内部から来る動機付け。
皆さん、誰に言われなくてもやりたくなる好きなこと、ひとつやふたつはありますよね?
Extrinsic motivation…これは、外部から来る要因です。
物理的な報酬(給料など)だったり、他人からのrecognitionだったり、義務だったり。
さて。これを踏まえて読んで欲しいのですが、子供っていうのは絵を描くのが大好きですよね。
ペンさえあれば壁や床にまで絵を描き始めるほど、どういうわけか“絵を描く”という行動は子供の心を掴むモノのようです。つまり、
Intrinsic motivationの非常に高いbehaviorです。
これを利用して、
Mark Lepperという心理学者はある実験を行いました。
子供たちを集めて、“何でもいいから好きな絵を描いて”とフェルトペンと紙を渡します。
頼まれた子達はそれぞれ思い思いに絵を描き始めるわけですが、
そのうちの1/3の子には、“絵を描けたらGood Player Award(よくできました賞)をあげるね”と前もって言っておいて、描き上げた子達にリボンのかかった認定証とたくさんのシールをあげます(たかがシールですが、子供にとってどれほどそれが魅力的なものか皆さん覚えているでしょう?)。
別の1/3の子たちには前もって何も言わず、
書き終えてから“よく描けたね!ご褒美だよ”と同様にGood Player Awardをあげます。
残りの1/3の子たちには、何も言わないし何もあげません。
一週間後、また同じ子供たちを集めて遊ばせます。
今度の遊び部屋には、何でも遊ぶ道具が揃っています。ありとあらゆるおもちゃ、トランポリン、ビデオゲーム、etc、etc…それからもちろんフェルトペンと紙も。
今回子供たちが受ける指示は“好きなもので好きなだけ遊んで!”これだけです。
そして、実験者たちはone-way mirrorの向こうから彼らが何をして遊ぶか観察します。
さて、この3つのグループの中で、どれが一番絵を書かない傾向にあったと思いますか?
答えは、
グループ1です。
彼らは、今回は“Good player awardをあげる”と言われていないわけですから、
当然今回はもらえないのだと推測します。絵を描くこと自体はもともと好きだったはずの
ものなのに、ご褒美がないと分かったので描く気を無くしてしまうのです。
絵を描いたらご褒美を、という約束をされたことのないグループ2・3は全く影響が無く、
多くの子供が変わらずに絵を描いて遊んだそうです。
別に“rewardをあげればあげるほどそれを好きでなくなってしまう”という説ではないんです。
もともと好きなものに対して
過剰にextrinsic motivationを与えてしまうと、intrinsic motivationは逆に下がってしまう、というオハナシです。
ご褒美というのは本来大きなreinforcerであるはずのもので、reinforcerの定義(※)とこの説は大きく矛盾するようですが、よく考えてみるとこれは簡単なことです。
もともと楽しんでいたことに対して“それをやったらこれだけのお金をあげるよ”とか言われると、
自分にとってそれはplayではなくもはやworkという認識に変わってきます。
一見reinforcerに見える“reward”も、実は自主的にやる、という意味ではpunisher(※)として働いている結論になります。これは最初のマーク・トウェインのquoteにも共通してくるわけです。
long runに置いて、この認識の変化はperformaceの質に段々と影響を与えてくるそうです。
私がこの話を聞いて、一番最初に思い浮かんだのがプロのスポーツ選手です。
NFL、NBA、MBL、それから日本のプロ野球など、選手は何千万何億という
普通に生活している私たちからは考えられないものすごい額の給料をもらってますよね。
文字通り身を粉にする職業だから、高くなるのは当たり前かもしれませんが、
それにしたってちょっと高すぎやしませんか?私はちょっとそう思うんですけど。
それなのに、“金額に納得がいかない”と文句を言ったり、契約金でモメたりする選手は
後を絶ちません。恐らく、彼らだって最初は“好きなスポーツができてお金まで貰えるなんて
なんて素晴らしいんだ!”と思った時期があるに違いないと思うのですが。
でもプレーをし続けるにつれ、その感情は薄れていってしまうものなのでしょう。
もちろんプロ選手のうちでもそうなってしまうのは一部でしょうが、お金の為にプレーするようになったり、スポーツに対する情熱や勝つことへの貪欲さ、目的を失ってしまったりする選手は少なからずいると思います(別にそういう選手を目の当たりにしたわけではないですが、きっといますよね)。貰える金額に反比例して、彼らのintrinsic motivation=純粋にそのスポーツを好きだという気持ちは減っていってしまう傾向ってあるんじゃないかなと思うのです。too much moneyが彼らをoverjustifyしてしまうんじゃないかと思うんですが、こんな考察はどうでしょう?
※reinforcer…a stimulus or event that increases the future probability of a behavior when it occurs contingent on the occurrence of the behavior.
punisher…a stimulus or event that, when presented contingent on the occurence of a behavior, decreases the future probability of the behavior.